NLPでは達成したい目標、望ましい状態、ゴールのことを「アウトカム」という。
たとえば、「適切な時間に就寝する」や「自分一人の時間を過ごす」はアウトカムである。
対して、アウトカムを超えたところにあるアウトカムを「メタアウトカム」と称する。
メタとは「~を超えた」の意。メタ認知、メタ思考、メタフィクション等、普通に使われている。
このメタアウトカムこそ「ゴールの背後の価値観」と同義である。
人がゴールを目指す目的は「自分の大切にしているものを手に入れるため」だ。私が「適切な時間に就寝」したい、「自分一人の時間を過ご」したいのは、私が大切にしているもの、「幸せ」を手に入れたいがためである。
つまりそれこそゴールを超えたゴール=価値観=メタアウトカムということだ。
よくしたもので、NLPにはこのメタアウトカムを明らかにするアイデアがある。もちろんクライエントに質問しなくては分からないわけだが、訊きたいことは一つ。
「それを手に入れることで、達成することで、あなたは何を得るのですか?」だ。
使う言葉は人それぞれ、状況によって使い分ける必要がある。しかし、この線に沿って質問し続けることによって、クライエントの内にある、しかし思ってもみなかった価値観=メタアウトカムを再発見してもらえるかもしれない。
その時もこのようなやり取りがなされたはずだ。
「佐々木さんは適切な時間に眠ることで何を得るんですか?」
「心身の休息が得られると思います」
「なるほど。じゃあ心身の休息が得られると佐々木さんは何を手に入れますか?」
「そうですね、翌日朝の爽快感、かなあ」
「翌日朝の爽快感、ね。じゃあその爽快感が手に入ったら何が得られますか?」
「今日もいい日だ、って感じの充実感、リラックス・・・」
「そういう充実感やリラックスが得られるとどんな感覚が得られますか?」
「・・・幸せな感覚ですね」
では幸せな感覚が・・・と続けていくと、ある地点で得るものの表現が堂々巡りをはじめる。それがメタアウトカムに行きついた一つの指標だ。ゴールは具体的なものだが、その背後の価値観は一般的に多くの意味を持つ曖昧なものだからだ。
同じ様に「自分一人の時間を過ごす」の背後を探っていくと、そこにあるのは「幸せ」である。それは幸せを得るための表現型が違うということだ。
とはいっても自分一人の時間を過ごさなくては得られない「何か」がある。それは適切な時間の就寝では得られない「何か」だ。幸せのひだの違い、色合いの違いとでも言おうか。それが内的エコロジーの不一致を引き起こすのだろう。
人間とは複雑で面白いもの。そんな人間を扱うコーチングは「アート」の匂いがする。
今回の私の結論。