「過っ去と未来と昨日と今日を 行ったり来ぃいた~り~」
というアニメソングがあったが、熟練の質問師(造語)は魔術師のようにこれを実現する。
「かつて同じ状況をどのように解決しましたか?」過去へ連れて行ったり、
「実現したらどうなっていると思いますか?」未来に連れて行ったり、
「まず何をしましょうか」行動に導いたり、
「あなたを止めているものは何なのでしょう」障害物を明確にしたり、
「もしあなたが実行したら何が起きるんでしょうか」無意識の恐れに気づかせたり・・・。
このような「質問」にパワーを与える要素は目に見えない、音に聞こえない部分にある。影響は意識的/無意識的両方に与えられるのだ。
そして、この影響が良いものとは限らないのが恐ろしいところ。
私はかつてそれを体験したことがある。
それはエクササイズ。ある課題に対して人を方向づける二つの異なる立場から質問してその反応を対比させてみる、というもの。
自分にとって望ましい状態と現実の間に差がある時、人はその差を「課題」「問題」と呼ぶ。
一つ目の立場はなぜその差があるのか、何が悪いのかなど「その差」自体を考える「問題志向」。
もう一つの立場は、なぜ自分はその状態を得たいのか、得るためにはどうすればいいのかなど「望ましい状態」について考える「アウトカム志向」である。
まずは「問題志向」の質問を受ける。さて何が起きますやら……。
5分後
「はいはい、私の責任ですよ。分かってますよ」
床に向かって答えを吐き出す私。もうたくさんだ。
3人一組、全員が質問に答える役を終えた。その体験を分かち合う時間も力なくうつむきがち。取り調べから解放されたという虚脱感がグループを覆う。
興味深いのは質問者がどんどん尋問の雰囲気を漂わせてきたこと。ただのエクササイズなのに質問の質が質問者にも影響を与えるのだ。
しかし、驚くのはその後だ。
今度は同じ課題に「アウトカム志向」の質問を投げかける。
するとどうだろう。身の内に湧いてくるこの力!
見よ!
さっきは「どうでもいいですよ」と捨て鉢だったあの人から、なんとやさしく美しいビジョンが語られることか!
クライエントにとって役に立たない質問を投げかけてしまったとき。
それどころか力を奪う質問をしてしまったとき。
その人が持っている、秘めている力は表現されることなく終わってしまうのだ。
だから私は全体の分かち合いの時間に言わざるを得なかった。
「いま質問の力に静かな感動を覚えています。そして、
人から力を奪う質問は役に立たないどころではなくもはや犯罪レベルだと思います」
と。
あなたはクライエントの力を奪う質問をしていませんか?
2018年2月開催
「これだけは身につけたいパワフルな質問法 ~NCCI質問法~」
NLP、認知療法、コーチングの質問法を統合して学びます。