佐々木です。
「ちょっとした届け出があるのでいっしょに役所に行ってほしい」
母の要請を受けて、私はスポークスマンとして付き合うことになりました。
「その年の正月に、ある土地が更地になっているか否か」
どうやらそれを伝えるだけの用事らしいのですが……。
役所のカウンター。担当の男性が用向きを確認してきます。
母は自分の言いたいことで頭がいっぱい。それと反比例するように母の説明は要領を得ないように聞こえます。
が、さすがはプロ。こう言った案件には慣れているのでしょう。一抱えほどある台帳をカウンターにどん。がっぷり四つで聴きましょう?の態勢です。
母に任せていたら日が暮れてしまう。しょうがない私が対応すべい、とまずは状況の確認から始めました。
担当氏には申し訳ないが基本的なことから。そもそも、
・正月に更地になっているとどうなのか。
・逆に更地になっていないとどうなのか。
・というか、数か月前の正月に更地だった/更地でなかったをいったいどう証明すればいいのか。
今となっては内容をまったく忘れてしまいましたが、どうやらあちらさんの書類に「更地だった/でなかった」が明記されることが重要なようです。
そこで私は最前からの疑問をぶつけてみました。
「しかし……この話、今日初めて我々が持ち込んだわけで、裏の取りようもないんじゃないですか?」
すると担当氏は私から視線を外しこうつぶやきました。
「まあ、正月にここがどういう状況だったかなんて、今となっては誰にもわかりっこないですからねえ……」
読者諸賢と同じく、私もピンときました。
つまり、「あなた様にとって都合のいい状況を申告してください」と
言ってはいないが言っているわけです。担当氏は。
「台風がしでかしたことであれば、それがなんであれ、責任がどうこうという問題にはならんと思いますが……。なんせ台風のすることですから……」(by 後藤喜一)
途端に自分が大人になった気がしました。
「ですよねえ。では……」
とペンを取り書類を引き寄せると
「ですからね(あわあわ)、この場所がお正月にどうなっていたかなんて(あわわ)、どうすればいいんでしょうか!?(あわあわ)」
「……母さん、ちょっと黙っててくれないか」
母を促し、早々に役所を後にしました。危うく話が振出しに戻るところだった……。
『甘えの構造』で有名な土居健郎先生は「大人になること」というテーマの中で、
『ホンネとタテマエが分化すること』を挙げています。
状況によってホンネとタテマエが使い分けられる=自我が発達している、ということ。
「100%黒、100%白」などはそれこそ100%ファンタジーの中にしかなく、世界はその中間あたりをフラフラしている。
なんて当たり前のことは時間と経験が教えてくれるのでしょう。
そして、「甘え」という日本の文化の中で交流分析を作動させるには、
日本ならではの交流分析が必要です。
というわけで、毎月1シリーズずつ「杉田塾」を割引価格でご提供キャンペーン、
3月は「西欧的TAから日本的交流分析へ 編」です。
その辺の面白さを余すところなく伝えてくれる本シリーズ。どうぞお楽しみに!