「お前は1枚のCDを聞き終わったら、キチッとケースにしまってから次のCDを聞くだろう? 誰だってそーする。俺もそーする」
有名なマンガの有名なセリフですが、私だってそうします。
では、食事の終わったトレイを下げようと立ち上がった時、お店の人が近づいてきたらあなただったらどうしますか?
というか、何を期待しますか?
私のある体験をお話ししましょう。
それはある研修会場を利用した時のこと。
運営者である私は、お昼時を大きく回った午後二時近く、施設内の食堂でぽつねんとランチをとっていました。
食堂は食べたいものを自分で選ぶセルフサービス。
いついつまでに会場に戻らねば、と時間を気にしながらの気忙しい食事でした。
午後二時。
調理場からどやどやとスタッフの方が出てきました。結構人数がいます。
どうやらこの食堂のお昼の営業は午後二時までのようです。
(これから皆さんで食事かな)
ちょうど食事が終わった私は、トレイを手に食器の下げ台へ向かいました。
と、進行方向からエプロン姿の調理のおばちゃんが近づいて来、
「ありがとうございました~」と私に声をかけます。
「あどうも。ご馳走様でした」
すっとトレイを差し出す私……。
想像してください。
清らかな渓流に顔を出した岩。
上流から笹の葉が流れてきます。
その葉は岩にあたると見えるや、優雅にかわし岩すれすれを流れ去ってゆく。
かのごとく、おばちゃんは私の差し出したトレイを前に
す、と通り過ぎていくではありませんか!
トレイを手渡せることを期待して、
トレイの重さが無くなることを予想して、
それ用に調整されていた私の重心。
トレイの上の食器がガシャリと音を立てるくらい、私はつんのめってしまいました。
振り替える私。泰然と歩み去るおばちゃん。
おお~いそこはトレイを受け取ってしかるべきでしょお仮にも客商売なんだからさあありがとうございましたからのスルーとかもう信じらんない「食器は各自でかたづけるのが決まりですから、それにもう就業時間じゃありませんので」って感じですかあ?さすがは半官半民のお役所仕事普通人のマインドとは一味違いますなあ!
(ここまで0.01秒)
と、私の持っている客商売に対する基準が反応します。
が、その直後、何とも言えないおかしみが湧いてきました。
「客商売なんだから、そこはトレイを受け取ってしかるべきだ」
その時の私の考えを言語化すればこうなるでしょう。
無意識の「信念」というものです。
でもそれは世界のルールでもなんでもないので、当然期待通りにならないこともあるわけです。
その自分の信念通りに事が運ばないからといってへそを曲げるのは、なんとも生産的な活動ではありません。
なんとなれば、おばちゃんにも価値観や信念があるわけなので。
(人って……ホント……色々だよなあ……)
そのような当たり前のことをかみしめながら、私は午後のお仕事に向かったのでした。
信念とは「あなたの行動原理」です。
それは価値観と違い、文章で表されます。
そして、意識する/しないに関わらず、あなたの活動の背後には信念があります。
ただし、信念とは、他者、世界、そして自分自身についての推測でしかありません。
ですが、私たちは信念をあたかも「真実」であるかのようにふるまいます。