前回、「コーチは行動とその背後にある肯定的意図を切り離して考える」と書いた。
もちろんこれはクライエントが自分を制限するような信念を持っていたり、一般的に見て生産的な行動を取っていないときの話だ。
・・・ここ何回かのブログを読み返してみると、なんだか人間の負の部分、フォースの暗黒面に話題が偏っている気がする。闇あるところに光を見よ、もバランス次第だと思う。
なので、今回はコーチングの王道。ゴールに到達したいクライエントとそのゴールの背後にある価値観の話をしようと思う。
守秘義務は? 知らんそんなもの! なにせ自分の話だからな。
逆算するにこのセッションは2013年の事だろう。時はそれ、所はこの年のICCコーチング・トレーニング会場だ。
ICCのトレーニングは毎日の最期にコーチング・セッションの時間が待っている。コーチングスキルのエクササイズではない。セッションである。つまり参加者同士、今まで学んできたあれやこれやを当人が抱えるに課題に試みるのだ。
トレーニング参加者は口をそろえて「毎日のこの時間が一番の学びだった」というフィードバックをくれる。が、これはまたの話題にしよう。
その日、私がクライエントとして持ち出したテーマは
「子供たちの学資保険に加入したいと思っている。が、資料を取り寄せたきりで詳細を聞くための連絡を担当者さんに取っていない・・・」
というもの。
この時長男P・3歳6ヵ月、長女C・0歳8か月。Cが生まれたのを良い機会と学資保険加入のことを考えたのだった。
私に万が一のことがあっても子供たちの学びのために最低限の備えはしておきたい。妻は二つ返事で賛成してくれて、保険会社の見つくろいまで手伝ってくれた。
そうして取り寄せた保険会社のパンフがテーブルの上に放置されて一週間が経つ。
「毎日お仕事お疲れ様で、夜はゆっくり休みたい」とか、
「俺も今日明日に死んじゃう訳じゃないしな」とか、
保険会社にたった一本の電話を入れることを止めている私の想い。
子供たちの学びのための備え。本当に大切に思っているのに・・・。何だかとっても情けない気分だ。
が、コーチの投げかけた質問によって私の状態は一変する。
現状や想いを聞いてくれた後、コーチは私にこう尋ねた。
「あきらさんにとって、お子さんのために学資保険に入ることはどんな価値があるんですか?」
私の中に様々な考えや感情、思い出や信念が渦巻き始める。
「……私は人生で“学び”というものにかなりの価値を置いています。小さいころから勉強は好きでしたし、実際何かを身につけるというのはとても面白い。家にも本がいっぱいあって、父もいつも何かしら勉強していました。そんな父が“あきら、勉強はしておいた方がいいぞ”というので。幸い妻も何かを“学ぶ”ということに価値を置いている人です。そんな私たち
(中略)
るだけ本物に触れさせたいとか。だから本当に大切なんです」
自分が大切にしているものに触れて、それを口に出した時の昂揚感。
自分がゴールを達成することの、本当の意味。
コーチの仕事はこれで終わりだ。実際次の平日に私は保険会社の担当者に電話をしていた。そして晴れて学資保険に加入、現在に至る。
賢明なる読者諸兄にはお分かりのとおり、
コーチは私のゴールの背後にある価値観を再発見させただけ。
クライエントを動機づけるにはそれで十分だったのだ。
今回の私の結論。