「あたしじゃないよ」~なぜそれが嘘だと分かるのか?

佐々木啓

「あたしじゃないよ。にい(兄)がやった」

 

長女しいたんこ4歳は嘘をついている。

笑っちゃうぐらい全身で「私は嘘をついています」と表現している。

 

“はさみを使った後は刃の部分にプラスチックのカバーをつける”というのが我が家のルールだ。

先ほどまではさみでチョキチョキと折り紙を細切れにして何かを作っていたしいたんこ。いまはお人形遊びをしている。はさみをテーブルに置いたままで。

 

だからこう言ったのだ。「しいたんこ、ちょっといらっしゃい」

私の声音から何か注意をされるであろうことを察知したしいたんこ。

 

私の前にやってきたその表情が

「これからパパが言うことと私は何の関係もなくて、そのような関わりのないことを言われて私は驚きます」

という内容の返答をするであろうことが分かる。

 

「はさみが出しっぱなしですよ。はさみを使った後の約束は何ですか」

「あたしじゃないよ。にいがやった」

 

声が高い。眉が上り目はまんまる。口がとんがり気味。そんなことを言われて心外だ、という雰囲気。兄貴のPのすけ7歳はテーブルに寄りついてもいない。

 

嘘をついている。

 

嘘をつくというのはなかなか高度な精神作業だ。成長したなあ。

つーか、しいたんこにとっては自分が不快な目にあわずにすむ方法を取っただけで、「嘘をつく」というのはこちら側の意味づけだよなあ。良し悪しは抜きにして。

などという内省もありつつ。

 

「しいたんこさん、パパは怒ってるわけじゃないの。危ないからはさみにカバーをつけて欲しいだけなの。片付けてくれますか?」

「ごめんなさい」テーブルに駆け寄りはさみを片付けるしいたんこ。

 

 

このように、特にトレーニングをしなくても私たちには嘘を見破れる能力がある。

しかしよくよく考えてみるとなぜそれが嘘だと分かるのか?

 

実際、あなたも「この人嘘をついているな」という雰囲気を感じたことがあるだろう。ではその雰囲気の構成要素とは何なのか、となるとなかなか答えもおぼつかない。

 

少なくとも今回のケースで言えることは、「普段の様子との違い」。

いつものしいたんこの挙動、口調、反応との差異が嘘をついていると判断させるのか? もちろんそれもあるだろう。だがそこにはもっと直観的な、言語化できない何かがあるようだ。

 

しかし確実に何かがある以上、それを認識、判断することも可能なはずだ。

今回の興味深いセミナーに参加する頃には長女しいたんこは5歳になっている。より精神活動が深化しているであろうしいたんこの

 

「あたしじゃないよ。にいがやった」

 

とサシで勝負、勝負!

 

 

 

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佐々木 啓

公認心理師/ICC認定国際コーチ/同認定国際チームコーチ/同認定国際ライフコーチ   ■略歴:2011年 ICNLP(International Community of NLP)認定NLPトレーナー資格取得(英国) | 2014年 「心理療法を応用した子供への関わり方」をテーマに個人的に講演を始める | 2015年 ICC(International Coaching Community)認定国際コーチ資格取得(英国) | 2016年 北区堀船カンフークラブ設立 | 2019年 公認心理師資格取得 | 2023年 柳生心眼流兵術奥伝印可 師匠より“玄盛”を受命される