先日のこと。
「まてこらガキぃ」
行きつけの公園に近づくとそんな大声が聞こえてきた。大人の、それも“ごっこ”ではない本物の敵意を含んだ声。
見れば50がらみのおっちゃんが5、6人の小学校高学年生を追いまわしている。
といってもその足取りはおぼつかなく、言葉もろれつが回っていない感じ。子供たちは迷惑そうな顔をして、遊具を中心にした点対称でおっちゃんを避けている。
「パパこわい~」
しいたんこが泣きそうな声を出す。せっかくPノ介としいたんこを連れて来たのにこれでは安心して遊べない。
「そうだよなあ。でもほら、ここには大人はパパしかいないから。何か大丈夫そうだけどあの子たちを置いてはいけないよ」
二人を公園の隅に追いやってゆっくりとおっちゃんに近づく。
「どうしましたオトウサン、そんなに大声あげて」
「ああ? アンタこの子の親か」
「いやあ通りすがりなんですけどね」
おっちゃんの右腕に自分の左腕をピタリとくっつけ、フラフラと子供たちを追いかけるペースに合わせて一緒に歩きながら声をかける。
酒臭くないのでクスリの可能性も考えながら、おっちゃんから話を聞き出してみると・・・。
自分はこの公園に隣接しているマンションの住人だ。
子供が登っちゃいけないところに登って騒いでいる。
公園の機材が壊れるかもしれない。
前にも注意したがまたやっていた。
「つまりこのガキどもはナメてるってことですわホンマに~」
おっちゃんの歩みはいつの間にか止まり、注意の方向は私に向いている。その間、私がしていたことと言えば、
「ほう!」「なるほど~」「それで腹が立ったと!」「ナメてるんじゃないかと!」
ラーメンズの「ホコサキさん」か!?
このように肯定もせず、否定もせず、同じノリでのらりくらりと話をしていただけだ。
「まあ人様に迷惑かけんな、って言いたいんですわ。そうでしょうよ」と笑みをこぼしたのを見て、「迷惑はね~、いかんですよね~」そろりそろりとマンションの方に誘導しようと思ったのだが。
「なになに、どうしたのさっきから」
公園に隣接する町工場からもう一人のおっちゃんが出てきた。
「・・・!」天を仰ぐ私。
「子供たちに大声上げてんのアンタか」
「アンタってなんじゃ。お前に関係ないやろが」
対面を避けて敵意を感じさせないようにして、
言語/非言語のペースを合わせて、
心理地図に入って、
肯定的意図を吐き出させて、
公園を安全な場にしようとしたこの5分弱の私の作業が水の泡だ。
アムロの「なぜ出てくる!」という気持ちがよくわかる。
まあ、子供たちに害が及ばなければはっきりいって大人同士のいさかいには興味はない。ののしり合いを続けるおっちゃん二人のもとを離れて子らの方に行く。
Pノ介は父の心境を知ってか知らずか「おかえり~、おつかれさま~」と出迎えた。
気がつけば小学校高学年生たちがいない。私もお役御免のようだ。
おっちゃん二人は赤の状態のペース合わせを続けている。アドレナリンの作用で気持ちいいのだろう。私はそれを遠目にしながら「BCBの事例をひとつゲットだな。今度使おう」とトクした気分でいたのだった。
ちなみにおっちゃんの右側につけたのは
利き腕の攻撃を封じるため、アンドこちらの利き腕をフリーにするため。
子供たちを守るためにコミュニケーションスキルと“念のため”の二段構え。
これが私ならではの「強み」である。
こういうおっちゃんのような人に関わるとき、怯え(CC)や警戒心(CP)を抱いていると相手の赤の状態をよび起してしまう。
狭義の“コミュニケーションスキル”には限界がある。
君子危うきに近寄らず、という言葉もある。
状況に対して自分がOKであること、青の状態でいられること。何にせよそこからだ。
こういうのをセットにしてもいいんですけどね・・・
Abe Wagner & Associates 認定
「よりよい人間関係とコミュニケーションスキル
~BCBベーシックコース」
交流分析&NLP&BCBのオリジナル技法で、実践的な対人スキルをお伝えします。