「P、ちょっとおいで」
「なあにパパ」
「お仕事で実験したいことがあるんだよ。手伝ってちょうだい」
「いいよ。何をどこに持っていくの?」
「道具はいらないんだ。Pにあることを想像して欲しいだけ。
例えばお前がショッカーの幹部だとして、自分の考えた罠に本郷猛がハマったとするだろ?」
「カンブってなに?」
「ああ、幹部ってのはえらい人のことだよ。地獄大使とか死神博士とか。で、お前の計画通りに作戦が進むと」
「どういうこと?」
「つまり本郷猛が“やめろぉぉぉ”って苦しんでるわけよ、お前の考えた通りに。それを見てお前は“狙い通りだ”って思ってるわけ」
「うん」
「もしお前がショッカーの幹部ならそれを見てどういう顔する? 表情って意味だけど」
「・・・わかんないな」
「お前が見てきた特撮のワルモノのことを想像してやってみてよ」
「こうかな」ぎこちない笑い。
実験終了。長男Pノ介7歳はその表情を取ることができなかった。
その表情。
赤ん坊は取ることがないと言われている表情。
人類に普遍的な7つの感情を表す表情の内、唯一左右が非対称な表情。
自分はこの人よりモノを知っている、人間として優れていると感じる時に見せる表情。
「軽蔑(Contempt)」である。
もう一つ、今度はあなたで実験。
「喜ぶがいい、きさまのような下級戦士が超エリートに遊んでもらえるんだからな」(ベジータ)
でも
「計画通り」(夜神月)
でも何でもいいので、誰か相手より優位に立っていると想像して実際に“にやり”としてみて欲しい。
くれぐれも周りの人に脅威を与えないように注意して。
果たしてどちらの口の端が上っただろうか。
その“にやり”が「軽蔑」の表情である。
それは「軽蔑」の表情を取る為の筋肉が発達しているということ、
筋肉が発達するまで「軽蔑」の表情を取った経験があるということ、
つまり私たちは普通に「軽蔑」という感情を感じながら生活しているということだ。
「そんなことない。私は人を軽蔑したことなんかない」というあなたも要注意。「軽蔑」の意味を広く捉えてほしい。
常識と思われることを知らない人。
何回言っても話が通じない人。
自分の価値観や信念に照らし合わせて理解できない人。
つまりは「自分の方が上」と無意識で評価判断したときに漏れるフォースの暗黒面が「軽蔑」の表情である。評価判断をしない赤ん坊に現れないのはこういうわけ。
そのような微表情は自分の感情に気づく前に現れて、気づく前に去っていく。コンマ何秒の世界。
もしコーチングやカウンセリングの最中に、面接や商談中に、妻に夫に「この人はなんでこうなのかしら・・・」感を目の前の人に抱いてしまった場合、あなたの顔には「軽蔑」の表情が浮かんでいたかもしれない。
困ったことに微表情は意識の検閲より早く表現されてしまう。つまりコントロール不可なのだ。
さて、冒頭の実験は「7歳男子に軽蔑の表情が現れるか否か」である。
「思考実験で難しいのかもしれないけど、Pは軽蔑の表情が取れないよ。小学一年生ってそんなもんかね」
妻、答えて曰く。
「あいつ、しいたんこにはよく軽蔑の表情してるよ。『そんなことも知らないのかよ』って」
かように幼いときから基本的な感情とは湧き出ずるものなのである。
「軽蔑」という感情の肯定的意図とは? オコナーさんの動画掲載!
欺瞞 見抜き方と対処法
開催:2018年5月4日(金祝)
会場:国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)
講師:ジョセフ・オコナー(Joseph O’Connor)
通訳:小林 展子 Ph.D.